タイ人女性は、怒ると無口になることが多いらしい。
Nちゃんも、最初に怒った時は無口ではなかったが、それ以降の喧嘩では無言でいることが増えてきた。
対策としては、放置するのが一番良いと言われているが、どうもそれが俺には難しい。
長時間、喧嘩が続くのは苦痛で仕方がない。
早く仲直りしたいという気持ちが強く、ついつい機嫌を取ろうとする。
その日も、Nちゃんの機嫌をどうにか取り戻そうと気を遣うことにした。
夕飯を買いに、近くのナイトマーケットに出かけたが、Nちゃんは一言も口をきいてくれない。
俺はただ黙って後ろをついていくだけ。
ナイトマーケットでは、Nちゃんがすべての食べ物を買ってくれた。
普段は、レストランでご飯を食べる時は俺が支払い、屋台で買うときはNちゃんが払ってくれる、そんな関係である。
俺の機嫌の取り方は、とにかく無言で気を遣うこと。
例えば、さりげなく荷物を持つなど、彼女の気持ちを考えて行動することだ。
また、時にはお酒を勧めて、気分をほぐしてもらうこともある。
今回も、その方法がうまくいったようだ。
ホテルに戻ってから、ご飯を食べながらお酒をすすめていると、だんだんとNちゃんが口を開くようになった。
ここで、俺は彼女に謝ることにした。
「ちょっとないがしろにしてごめんね」と。
それとなく当たり障りのない理由で謝ることにした。
間違えると火に油を注ぐからね。
そして、「これからも一緒にいたいな。楽しい時間を共有しようね」と、気持ちを伝えた。
Nちゃんの素晴らしいところは、怒っていても、ちゃんと俺のことを気遣ってくれることだ。
海に入って濡れたTシャツをハンガーにかけて乾かしてくれたり、日常の細かいところまで気を配ってくれる。
俺は寝る前に、喧嘩したままの状態でいるのが本当に嫌いなので、仲直りできてホッとした。
毎回、「もう喧嘩はしないぞ」と心に誓って寝るのだが、これからもきっと頻繁に喧嘩を繰り返すことになる。
続く