昼過ぎまでしっかり寝ていた俺に対し、Nちゃんは先に起きていたようだ。
普段は夕方起きる俺にとって、14時に起きるのは早起きも同然である。
そんな俺を待っていたのは、用意された朝食。しかも、これが驚くほど美味かった。
タイは外食文化が根強く、そこら中に安くて美味しい屋台があるため、すべて外食でも問題ない。
しかし、起きた瞬間に温かいご飯が用意されているというのは、やはり最高の贅沢である。
ここから自然と、一緒に生活するようになった。
一緒にクラブへ行ったり、ナイトマーケットを巡ったり、Nちゃんが知らないパタヤのスポットに連れて行ってくれたおかげで、俺のパタヤに関する知識が格段に増えた。
ありがとう、Nちゃん。
だが、楽しい3日間はあっという間に過ぎ去ってしまった。
俺は残り12日ほどパタヤに滞在する予定だったが、Nちゃんはすでにマレーシア行きのフライトを手配済み。
俺はこの時、
(この子と遊ぶのはこれで最後か、楽しかったなあ。またパタヤに来た時に会えればいいなあ)
と思っていた。
前日の夜、Nちゃんがしきりに「take care na」と言っていたのが印象に残っている。
パタヤには病気が蔓延しているから気をつけろ、と言わんばかりである。
彼女曰く、マレーシアでセクキャバをしているが、客と一夜を共にはしないらしい。
(本当かどうかは知らない。)
パタヤで働きたくない。客と寝たくない。
そう言っていた。本当かはわからない。
疑うのも嫌なので、特に気にしないことにした。
翌朝9時、Nちゃんを空港行きのジョムティエンバスターミナルまで送り、俺たちは解散した。
その後、自分の本拠地に帰って寝ようとした時、Nちゃんからメッセージが届いた。
「今からマレーシアに行くか、田舎に帰るか迷っています。おばあちゃんの具合が悪いので看病しなければならない。あなたは私と一緒に実家に行きたいですか?」
正直、田舎には行きたくなかった。
タイの田舎は衛生面が不安だし、俺は汚い場所が苦手なのだ。
ここで断れば、もう二度と会えないだろうな…
どうしようかと迷っていた俺に、Nちゃんはさらに追い打ちをかけるようにメッセージを送り続ける。
「短い間だけでいいよ?」
「あなたの仕事はパソコンでできるんだから、場所は関係ないよね?」
おそらく、俺が他のタイ人女性と遊ぶのが嫌なんだろうな…
異国の地で聞いたこともないパタヤから車で5時間の土地に、俺は1週間連れ去られることになるのか…
大丈夫だろうか。
結局、迷った末に「人生は一度きりだし、いい経験になるだろう」と自分に言い聞かせ、Nちゃんの誘いを受けることにした。
こうして、Nちゃんは空港からパタヤに戻ってきた。
そして田舎へ一緒に行くことにした。
続く